今月の一人(『未来 2017.8 No.787』掲載)

Date: 18/08/24 | Category: Essay | コメント »

【今、私のうたは…】
 リズム感がなく音痴な私にとって、うたは短歌しかありません。十年ほど短歌から離れていました。昨年の夏、恩師が夢に三度現れて、歌を創ることを促されました。

 さくさくと朝の敷道踏みゆけばいつよりか降るセシウムの雪

 十数年ぶりに心に浮かんだ一首です。今私のうたは、心が社会の出来事に触れて揺らぐ時、水面に浮かぶ波のようにことばとして与えられるものです。

【骨は枯れても】

・共謀罪法案の審議始まれば映画小林多喜二の「母」観る

・貧しさの極みに子を産み子を育て北の大地のごとき母セキ

・貧しさとその不条理に向かうとき多喜二のペンは剣より鋭し

・拷問ののちの多喜二の亡骸の無惨は人かはたまた法か

・亡骸にすがり「もう一度立て」という母の慟哭いかに慰む

・剣太刀持たざる無実の拷問死 骨は枯れてもまた蘇る

・ははそ葉のつもる思いに子を偲び多喜二の母の作る牡丹餅

・キリストの磔刑と息子の拷問を重ねて慰む多喜二の母は

・輪になって人は生贄見るものだ同心円は広がるばかり



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